« 2019年10月 | トップページ | 2019年12月 »

2019年11月 4日 (月)

『走れメロス、ならぬ、走れよメロス!』

『走れメロス、ならぬ、走れよメロス!』
人間学を学ぶ月刊誌致知に、連載「日本の教育を取り戻す」
という中村学園大学教授の占部賢志先生と教育関係者の
座談会形式の質疑応答の文章があります。
致知十月の第七十四回目の連載で、占部先生が、教科横断
型学習の大切さを次の様に説かれています。
「一つの科目だけで解ける課題なんてたかが知れている。
 これからの課題は、科目相互のネットワークを構築して
 当らなきゃ、解決の糸口さえつかめません。」
 と語りながら、その教科横断型学習のとても面白い事例を
 一つ紹介されています。
 それは一般財団法人理数教育研究所が小中学高生を対象に
募集している自由研究で表彰された作品で、当時中学二年生
の村田一真君という生徒が書いた「メロスの全力を検証」と
題するレポートです。
 太宰治の「走れメロス」は、教科書の定番の代表的な
物語で、主人公のメロスが故郷の村とシラクス市という街
の往復を走り抜いて約束を果たす物語ですが、中学二年生
の一真君は、メロスはどの程度のスピードで走ったかとい
う問題意識を持って読み解いていくのです。
以下、一真君の分析を占部先生が次の様に説明しています。
 まず、村とシラクス市の片道は「十里」と書かれている
から39㎞。市を出発したのは「初夏、満天の星」とあるの
で、おそらく午前0時。村に到着した時は「日は既に高く」
「村人達は野に出て仕事を始めた」というから、午前十時
と推定する。
 で、計算すると時速3.9九kmとなります。人の歩行の平均
は時速4㎞ですから、なんだメロスは普通に歩いているじゃ
ないかと驚くのです。
 復路も一真君は時刻の推定から始めます。この物語の舞台
である「シラクス」は、イタリアのシチリア島の南部に位置
し、北緯38度であることを突き止める。
 目覚めたのは「薄明の頃」と記されている。一真君は北緯
38度は仙台と同じだと気づく。そして仙台の初夏の日の出
時刻を調べると午前4時頃と判明。しかし「悠々と身支度を
始めた」というから、30分を要したであろうと考え出発は
午前4時30分。日没ギリギちに着いているので午後7時と
推定します。
 こうして、所要時間 14.5時間を割り出し、メロスは、
時速 2.7㎞で戻ってきたことを明らかにしたのです。
一真君の結論が振るっています。
---「今回調べてみて、メロスは全く全力で走っていない
ことがわかりました」「『走れメロス』というタイトルは
『走れよメロス』のほうがあっているなと思いました。」
 発想が柔軟で、好奇心も豊かだし調査能力もすごいと、
この座談会に登場の先生が評価されています。
 私も久しぶりに文庫本で20ページほどの短編ですが「走れ
メロス」を読んでみました。やはり名文章ですので、目頭が
熱くなりましたが、一真君の分析を元に読むと、メロスは、
全力で走ったという説明を疑いながら読んでいると気づきま
した。
 復路では、大雨のため増水し荒れ狂う川が橋を破壊し、
その濁流を泳ぎ切り体力を使い尽くし、その上に、王様が
つかわせたと思われる一隊の山賊に襲われながらも、3人を
打ちのめして隙をついて逃げ延びるなど難局を乗り越えなが
ら、日没寸前で親友の元にたどり着くという話ですが、
一真君の発想力とストーリーの展開力、そして分析力には
あっぱれ!恐れ入りました。
 最後に占部先生のこの一真君の研究に対する評価を紹介し
て締め括ります。
 この一真君の自由研究には、読解力をもとに地理や社会科
の知識、基礎的な天文常識や計算能力などを上手に使って
解明していくプロセスがみて取れるでしょ。これが期せず
して実現した「教科横断型」なんです。
今から必要なのはこうした学びですね。
最後までお読み頂きありがとうございます。
***************************
  藤橋家homepage http://www.fujihashiya.com/
  たまごや通心(こだわりの通販)http://www.tamagoya.org/
  姫路ケーブルテレビ WINK“たまごや”
  放映番組~いま、輝いてます~のYou Tubeです。
  兵庫の社長tv藤橋家 
 ***************************

| | コメント (0)

« 2019年10月 | トップページ | 2019年12月 »